バックオフィスDXとは?メリット・デメリットから具体例・進め方まで徹底解説
#

バックオフィスDXとは?メリット・デメリットから具体例・進め方まで徹底解説

経理や総務などのバックオフィス業務において、「人手不足で業務が回らない」「紙の書類が多くて非効率」「リモートワークに対応できない」といった課題を抱えていませんか。

その解決策として注目されているのが「バックオフィスDX」です。

本記事では、バックオフィスDXの基礎知識から、生産性向上やコスト削減といったメリット、導入時の注意点まで解説します。

さらに、バックオフィスDXを失敗しないための進め方を5つのステップで紹介しますので、自社でDXを推進する際にお役立てください。

バックオフィスDXとは

企業の業務は、顧客と直接やり取りする営業などのフロントオフィスと、それを支えるバックオフィスに分かれます。

バックオフィスとは、経理・人事・総務といった顧客と直接対面しない管理部門のことを指します。

このバックオフィス業務にAIやクラウドサービスなどのデジタル技術を導入し、業務プロセスそのものを変革させる取り組みが「バックオフィスDX」です。

重要なのは、単にITツールを導入して業務をデジタル化するだけでなく、結果として「組織全体の変革」を目指すことにあります。

経済産業省の定義にもある通り、DXの本質はデジタル化によって得られたデータや時間を活用し、新たな価値の創造やビジネスモデルの変革を通して、自社の優位性向上につなげることです。

つまりバックオフィスDXは、コスト削減や業務効率化だけでなく、企業の成長を支える経営戦略といえます。

バックオフィスDXの必要性

なぜ今、多くの企業にとってバックオフィスDXが急務なのでしょうか。

バックオフィスDXが必要な背景には、社会やビジネス環境の大きな変化があります。

まず、リモートワークをはじめとする働き方の多様化に対応する必要があるためです。

紙媒体の書類や押印のための出社といった旧来の業務フローは、柔軟な働き方の障壁となり生産性を低下させます。

DXによって業務をデジタル化することで、場所を選ばない効率的な働き方が実現できます。

また、労働人口が減少する中で、コストと工数の削減は喫緊の課題です。

DXで請求書処理や勤怠管理などの業務を自動化すれば、人件費や間接コストを削減でき、従業員はより付加価値の高い業務へ集中しやすくなります。

これらの課題を解決し、企業の競争力を維持・向上させるために、バックオフィスDXへの取り組みが求められています。

バックオフィスDXの具体的な方法

バックオフィスDXを実現するための方法には、様々な方向性の手法があります。

社内で実施している業務の内容やDXを行う目的に合わせて最適な方法を選択することが重要です。

具体的な方法目的実施内容
業務のペーパーレス化・書類作成、承認、管理の効率化 ・書類紛失リスクの低減デジタルツールを活用して書類作成と管理を行う
業務のアウトソーシング・重要ではない業務の工数削減 ・重要な業務へのリソース集中マニュアル化・ルール化できる業務を社外に外注する
RPA(ソフトウェアロボットで業務を実行するツール)の活用・定型的な業務の効率化 ・ヒューマンエラーの防止定型的で反復される作業をシステムで自動化する

バックオフィスDXのメリット

バックオフィスDXの推進には、「生産性の向上」「コストの削減」「人的ミスの防止」「リモートワークへの対応」といった、経営に直結する多くのメリットがあります。

たとえば、これまで手作業で行っていたデータ入力や書類作成を自動化すれば、従業員はより重要なコア業務に集中できるようになります。

ここでは、バックオフィスDXがもたらすメリットについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。

生産性の向上

バックオフィス業務には、経費精算・勤怠管理・請求書処理といった、毎月決まって発生する定型業務が多く存在します。

これらの業務を人の手で繰り返し行うと、多くの時間がかかるだけでなく、誤入力といった人的ミスも発生しがちです。

DXツールを導入してこれらのルーチン業務を自動化することで、作業時間を大幅に短縮し、人的ミスを根本から減らせます。

最も大きな効果は、定型業務から解放された従業員が、データ分析や業務プロセスの改善提案など、重要なコア業務に集中するための時間を確保できる点です。

これにより、従業員個人の成長を促すと同時に、組織全体の生産性を大きく向上させられます。

コストの削減

バックオフィスDXがもたらすメリットの中でも、コスト削減はとくに期待されています。

これまで主流だった紙ベースの業務では、書類の印刷代や郵送費のほか、ファイルを保管するための倉庫の賃料など、多くの費用がかかっていました。

DXを推進しペーパーレス化を実現することで、これらの費用を削減できます。

さらに、間接コストの削減も重要なポイントです。

たとえば、請求書を探す時間や、承認印のための移動時間、手作業によるデータ入力作業などが該当します。

これら一つひとつにかかる人件費は目立ちませんが、積み重なると全体として大きなコストとなるでしょう。

業務をデジタル化・自動化することで、これらの作業時間を大幅に短縮でき、従業員は本来のコア業務に専念しやすくなります。

このように、DXは直接コストと間接コストの両面から企業のコスト構造を大きく改善します。

人的ミスの防止

経理での請求書処理や人事での給与計算など、バックオフィスが扱うお金や個人情報に関する業務は、1円の違いや1文字のミスが企業の信用問題につながります。

しかし、データ入力や転記、目視によるダブルチェックなど、人の手に頼る業務には限界があります。

これらの業務は担当者の経験や体調に影響されやすいため、ミスのリスクを完全になくすことはできません。

バックオフィスDXを推進し、RPAやクラウドシステムを導入してこれらの定型業務を自動化することで、人的ミスを防止できるでしょう。

データはシステムのルールに従って正確に処理されるため、業務の品質が安定し、信頼性も大きく高まります。

その結果、ミスの修正にかかっていた時間や、確認作業による従業員の心理的負担も減り、組織全体の生産性向上に大きく貢献します。

リモートワークへの対応

バックオフィス業務のDXは、現代の多様な働き方を実現し、リモートワークへスムーズに対応できる体制を構築します。

従来の紙ベースの業務では、請求書への押印や契約書の確認、郵便物の受け取りといった作業のために、どうしても誰かが出社する必要がありました。

これでは、全社的にリモートワークを推進する上での大きな障壁となってしまいます。

DXを推進し、デジタル化やクラウドサービスの活用により、バックオフィス業務は場所を問わず自宅などからでも対応可能になります。

その結果、従業員は柔軟な働き方を選択でき、満足度の向上にもつながるでしょう。

さらに重要な点は、優秀な人材の確保において有利になることです。

勤務地という制約がなくなることで採用活動の幅が全国に広がり、育児や介護といった事情を抱える有能な人材も獲得しやすくなるでしょう。

バックオフィスDXのデメリット

多くのメリットがある一方、バックオフィスDXの推進には注意すべきデメリットも存在します。

導入を成功させるためには、これらの課題を事前に把握し、適切な対策を取ることが大切です。

具体的には、システムの導入時にかかる初期費用や月々の利用料などのコスト面、さらに新しいツールを全社員に使いこなしてもらうための教育や運用ルールの整備などが主な課題です。

ここでは、バックオフィスDX推進の際に直面しがちなデメリットについて、その対策とともに解説します。

初期導入コストやランニングコストがかかる

バックオフィスDXを進める上で、最も大きなハードルとなるのがコストの問題です。

新しいシステムやツールを導入する際には、必ず初期費用が発生します。

比較的安価に始められるクラウドサービスであっても、月額や年額で支払うランニングコストが継続的にかかります。

また、見落としがちなのが、既存システムとのデータ連携や、自社の業務フローに合わせたカスタマイズにかかる追加費用です。

さらに、金銭的なコストだけではありません。

全社員が新しいツールをスムーズに使いこなせるようにするための研修や、社内マニュアルの整備といった教育コストも必要不可欠です。

とくにリソースが限られる中小企業では、これらの準備によって担当者の業務負担が一時的に増大することも念頭に置かなければなりません。

導入を成功させるには、これらの費用を事前に洗い出し、長期的な視点で費用対効果を見極めることが重要です。

ツールが複雑で社内定着に時間がかかる

バックオフィスDXを進める際に導入したツールが、なかなか社内で定着しないケースも多く見られます。

とくに、多機能で複雑なツールは、従業員が操作に慣れるまで時間がかかり、「以前のやり方の方が楽だった」と敬遠されることもあります。

現場の業務フローやITスキルを十分に考慮せずにツール選定を進めると、「導入したけれど一部の従業員しか使っていない」という状況に陥りがちです。

このような状況は、新旧の業務管理方法が混在し、かえって非効率になる事態を招きます。

その結果、導入にかけた多額のコストが無駄になるばかりか、従業員のDXへの意欲を大きく損ない、今後の変革に対する抵抗感を生む原因となりかねません。

ツール選定時には機能の豊富さだけでなく、全従業員にとっての使いやすさと、導入後のサポート体制まで含めた計画が不可欠です。

情報セキュリティや法改正対応リスクがある

バックオフィスDXによって業務データがクラウド上に集約されると、利便性が向上する一方で、情報セキュリティ管理の重要性が高まります。

外部からのサイバー攻撃による情報漏えいや、内部関係者による不正アクセスといったリスクに常に備えなければなりません。

対策として、ツールが強固なセキュリティを備えているかはもちろん、社内でもアクセス権限を厳格に管理し、利用状況について監視する体制を整えることが重要です。

また、見落としがちなのが法改正への対応リスクです。

電子帳簿保存法やインボイス制度など、バックオフィス業務に関連する法律は頻繁に改正されます。

導入したDXツールが最新の法令に迅速に対応できなければ、コンプライアンス上の問題が生じる恐れがあります。

そのためツールを選定する際は、セキュリティ機能だけでなく、法改正への対応実績や今後のアップデート方針まで慎重に確認することが重要です。

バックオフィスDXの進め方

バックオフィスDXの重要性は理解していても、「何から手を付ければ良いかわからない」という方も多いのではないでしょうか。

バックオフィスDXを成功させるには、やみくもにツールを導入するのではなく、計画的にステップを踏んで進めることが重要です。

本章では、バックオフィスDXプロジェクトを失敗させないための具体的な進め方を「目的設定」から「効果測定」まで5つのステップに分けて解説します。

この手順に沿って進めることで、自社の状況に合ったバックオフィスDXを実現できるでしょう。

STEP1:目的設定と優先順位付け

バックオフィスDXを成功させるための最初のステップは、「目的の明確化と優先順位付け」です。

まずは「なぜDXを行うのか」「DXによって何を達成したいのか」というゴールを社内で具体的に設定することから始めましょう。

たとえば、「デジタル化を進めてコストを20%削減する」「勤怠管理システムを刷新して労務担当者の業務を効率化する」「全社でリモートワーク体制を構築する」など、自社の課題に即した明確な目的を掲げます。

ゴールが具体的であるほど、後に続くツール選定などの判断基準がぶれにくくなります。

重要なのは、この目的を経営層と現場でしっかりと共有することです。

DXが単なるシステム導入ではなく、全社的な変革活動であるという共通認識を持つことで、現場からの協力も得やすくなります。

複数の課題がある場合は、経営への貢献度や緊急性を考慮して優先順位を付け、計画的に進めることが重要となります。

STEP2:現状把握と課題の洗い出し

DXで達成したい目的が明確になったら、次に取り組むのが現状の正確な把握と課題の洗い出しです。

このステップでは、まず経理・人事・総務といったバックオフィス各部門の業務をすべて棚卸しし「誰が、何を、どのように行っているのか」を、具体的に可視化します。

その上で、非効率な部分や問題点を一つひとつ整理していきましょう。

たとえば、業務の属人化や紙の書類でのやり取り、手入力などです。

古いシステムが業務の妨げになっていないかも、見直してみましょう。

ここで自社の課題を解像度高く把握することが、後のツール選定で的確な判断を下すための重要な土台となります。

漠然とした問題意識から、具体的な改善点へと落とし込むことがDX成功への近道です。

STEP3:最適なツール・サービスの選定

STEP1で設定した目的とSTEP2で洗い出した課題に基づき、それらを解決するための具体的なITツールやクラウドサービスを選定します。

近年、バックオフィス業務向けのサービスは数多く存在し、それぞれ機能や料金体系が大きく異なるため、選定は慎重に行う必要があります。

「有名だから」「価格が安いから」といった理由だけで安易に導入すると、自社の業務フローに合わず、かえって非効率になる可能性があるためです。

選定の際は、まず自社の課題を解決できる機能が備わっているかを確認しましょう。

さらに、従業員にとって直感的に操作しやすいかどうか、導入後のサポート体制やセキュリティレベルの高さなども重要な判断基準となります。

自社にITの専門知識を持つ人材がいない場合は、外部の専門家に相談することも有効な手段です。

複数のサービスを比較検討し、自社の課題解決に最も貢献するものを見極めることが重要なポイントとなります。

STEP4:トライアル導入と社内浸透

最適なツール・サービスを選定したら、いよいよ導入のステップに進みます。

ここで大切なのは、全社一斉に導入するのではなく、まずは限定的な範囲で「トライアル導入」を行うことです。

最初から大規模に展開すると、現場の混乱を招いたり、予期せぬトラブルで計画が頓挫したりするリスクが高まります。

まずは、特定の部署やチーム、あるいは特定業務に絞ったスモールスタートを試みましょう。

たとえば、「経理部門の経費精算業務にクラウド経費精算システムを導入する」「特定の事業所の勤怠管理からクラウド化を試す」など、成果が見えやすく、多くの従業員が効率化の効果を実感できる業務から始めることがおすすめです。

このトライアル期間でツールの操作性や費用対効果を慎重に検証し、課題を洗い出します。

ここで得られた成功体験や改善点をもとに導入計画を立てることで、その後の本格的な社内浸透をスムーズに進められます。

STEP5:運用改善と効果測定

バックオフィスDXは、ツールを導入して終わりではありません。

むしろ、導入した後に継続的な運用改善と効果測定を行うことこそが、DXの成功と効果の最大化に不可欠なステップです。

導入後は定期的に効果測定を行い、STEP1で設定した「コスト削減率」や「業務時間の短縮率」といった目標(KPI)が、実際にどの程度達成できているかを具体的な数値で評価しましょう。

もし目標と実績に大きな差があれば、その原因を分析し、現場の意見も取り入れながら運用方法の見直しやツールの設定変更といった改善策を実行します。

ビジネス環境やテクノロジー、関連法規は日々変化しているため、一度構築した仕組みが常に最適とは限りません。

したがって、「計画・実行・評価・改善」というPDCAサイクルを継続して実践することで、DXの成熟度が高まり、変化に強い組織体制の構築や業務効率の持続的な向上が期待できます。

郵便業務のDXを目指すなら「atena」

バックオフィス業務のDXを進める中で、最後まで課題として残りやすいのが「郵便業務」です。

「郵便物や請求書を受け取るために、誰かが必ず出社しなければならない」という状況は、完全なリモートワーク体制への移行を妨げる大きな障壁となっています。

このような課題を解決するのが、クラウド郵便サービス「atena」です。

「atena」は、会社に届くあらゆる郵便物を代理で受け取り、スキャンしてクラウド上で確認・管理できるサービスです。

担当者は出社することなく、どこにいてもリアルタイムで郵便物の内容を確認できるため、部署内での共有や対応依頼もスムーズに行えます。

郵便物対応にかかる工数を大幅に削減できるだけでなく、ペーパーレス化によるコスト削減や、書類の紛失リスク低減にも貢献します。

「atena」はリモートワークを本格的に推進し、バックオフィス全体のDXや生産性を向上させたい企業にとって有効です。

まとめ

本記事では、バックオフィスDXの基礎知識からメリット・デメリット、そして成功に導くための具体的な進め方までを解説しました。

DXは単なるツールの導入ではなく、業務プロセス全体を見直し、組織の生産性を向上させるための重要な経営戦略です。

労働人口の減少や働き方の多様化が進む現代において、その重要性はますます高まっています。

まずは本記事を参考に、自社のバックオフィス業務における課題を整理し、DX化への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。