オフィスの移転や在宅勤務の拡大に伴い、会社宛てに届く郵便物の管理方法にお悩みではありませんか?
郵便局の「転居・転送サービス」は便利な仕組みですが、銀行や行政からの重要書類に使われる「転送不要」郵便物が届かないなど、ビジネス利用には思わぬ落とし穴もあります。
本記事では、総務担当者が知っておくべき郵便局の転居・転送サービスの手続き方法から、意外と知られていない注意点、ビジネスにおけるリスク対策までをわかりやすく解説します。
郵便局の転居・転送サービスとは?
郵便局の「転居・転送サービス」とは、転居などで住所が変わった際に、旧住所宛てに届いた郵便物や荷物(ゆうパック等)を、届け出た新しい住所へ1年間転送してくれるサービスです。
オフィスを移転する際はもちろん、在宅勤務の導入に伴い、郵便物の管理体制を見直す際などにも利用が検討されます。
手続きは窓口や郵送のほか、インターネット(e転居)からも可能です。
非常に便利な仕組みですが、すべての荷物が転送されるわけではありません。
具体的には、他社のメール便や「転送不要」の記載がある重要書類などは対象外となります。
そのため、ビジネスで利用する際は、こうした仕様とリスクを正しく理解しておくことが重要です。

△ 日本郵便のウェブサイトより
関連記事:いざ引っ越し!「転居転送サービス」で旧住所に届いた郵便物をしっかり受け取る方法
郵便局の転居・転送サービスでできること
郵便局の転居・転送サービスを利用することで、旧住所に届いた郵便物を新住所に転送できます。
また、転送対象となる「宛名」を指定できることも特徴です。
転居届の「転送を希望する者」欄に記載した宛名のみが転送されます。
たとえば「一部の部署やグループ会社のみ移転するため、特定の宛名だけを転送させる」といった使い方も可能です。
さらに、e転居を通じた申請であれば、提携する行政・民間サービスの住所変更案内も利用できます。
郵便局の転居・転送サービスを申請するタイミング
引越しの日程が決まり次第、直ちに手続きを行うことをおすすめします。
データの登録には土日祝日を除いて3〜7営業日ほどかかるため、直前の申請では転送開始希望日に間に合わず、旧住所へ郵便物が届いてしまう恐れがあります。
誤配送を防ぐためにも、遅くとも引越しの「1週間前」までには申請を済ませておきましょう。
急ぎの場合は、郵送や窓口よりもインターネット(e転居)での申請が比較的スムーズです。
郵便局の転居・転送サービスが適用される期間
郵便局の転居・転送サービスの有効期間は「届出日から1年間」です。
ここで特に注意しなければならないのは、期間のカウントが「転送開始希望日」から始まるのではなく、実際に届け出をした日(申請日)から始まるという点です。
たとえば、余裕を持って引越しの1か月前に届け出た場合、その1か月分もカウントされるため、実質的に新住所へ転送される期間は11か月ほどになります。
あまりに早すぎる申請は、転送される期間を短くしてしまうため注意が必要です。
なお、1年を超えて転送を希望する場合は更新も可能ですが、自動延長はされません。
更新に関する詳細な注意点やリスクについては、後述の「注意点」の項目で詳しく解説します。
郵便局の転居・転送サービスの手続き方法
郵便局の転居・転送サービスの申し込みには、主に「インターネット(e転居)」「郵便局窓口」「郵送」の3つの方法があります。
個人の場合はインターネット上だけで完結するオンライン申請が便利ですが、法人の場合は提出書類が異なるため事前の確認が欠かせません。
ここでは、各申請方法の具体的な手順と、スムーズに手続きを完了させるためのポイントについて解説します。
自社の状況に合わせて、最も手間のかからない郵便局の転居・転送サービスの手続き方法を選びましょう。
インターネット(e転居)によるオンライン申請
「e転居」は、パソコンやスマートフォンから24時間いつでも申し込みができる無料のオンラインサービスです。
窓口へ行く時間を削減できるため、多忙なバックオフィス担当者には最適な方法です。
利用にあたっては「ゆうID」への登録と、スマートフォンでの本人確認(eKYC)が必須となります。
なお、法人名義の転居であってもe転居の利用は可能です。
ただしその場合、申請を行う担当者「個人」のスマートフォンと顔写真付き本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)を用いて認証を行う必要があります。
登記簿謄本などが不要で手軽な反面、業務の手続きに個人の認証情報を用いることになるため、社内規定等で問題がないか事前に確認しておきましょう。
郵便局窓口での申請
最寄りの郵便局窓口で直接手続きを行う方法です。
申請時には、窓口へ行く提出者の本人確認が厳格に実施されます。そのため、運転免許証やマイナンバーカードなどの公的書類を必ず持参してください。
法人の転居においても、基本的には窓口に来る方の「本人確認書類」があれば手続きは可能です。
ただし、スムーズな申請のために、念のため社員証や名刺など、会社との関係性が分かるものを持参しておきましょう。
手続きに不安がある場合は、事前に最寄りの郵便局へ必要書類を確認してから向かうことをおすすめします。
郵送での申請
郵送で申請を行う場合は、まず郵便局の窓口等に設置されている「転居届」の用紙を入手します。
届出書に必要事項を記入し、確認資料の写しを同封して専用封筒でポストへ投函します。
切手は不要です。法人の場合、提出者(担当者)の本人確認資料の写しを同封しますが、対面での確認ができない分、書類不備があった際の修正に時間を要してしまいます。
転居・転送サービスの開始が遅れると業務に支障が出るため、法人の場合は郵送ではなく、その場で不備を確認できる窓口での手続き、またはe転居の利用をおすすめします。
どうしても郵送を利用する場合は、事前に郵便局へ必要書類の詳細を確認しておきましょう。
郵便局の転居・転送サービスの注意点
郵便局の転居・転送サービスは便利ですが、ビジネス利用においては注意点がいくつか存在します。
とくに、銀行や行政からの重要書類に記載される「転送不要」の郵便物は、転送されずに差出人へ返還されてしまうため、重要な手続きがストップしてしまう可能性があります。
ここでは、適用開始までのタイムラグや、他社の宅配便は対象外である点など、知っておかないと業務トラブルになりかねない郵便局の転居・転送サービスの注意点を詳しく解説します。
「転送不要」郵便物は返送されてしまう
転送サービスを利用する際、業務上最も注意が必要なのが「転送不要」と記載された郵便物の扱いです。
これは主に、銀行のキャッシュカードやクレジットカード、行政からの重要書類などに記載されています。
「転送不要」という記載には、差出人の「宛名の住所に居住(所在)していない場合は、転送せずに返送してほしい」という意味があります。
そのため、郵便局に転送届を出していても新しい住所には転送されず、そのまま差出人へ返還されてしまうのです。
結果として、重要なカード類が手元に届かないだけでなく、金融機関等に「所在不明」と判断される恐れもあります。
オフィス移転等の際は、転送サービスに頼り切らず、銀行や役所への住所変更手続きを最優先で行うようにしましょう。

転送設定を途中で止められない
一度提出した転居・転送届は、原則として途中で停止や取り消しをすることができません。
そのため、転送期間中に別の場所へ移転した場合は、旧住所(A)から転送先(B)、さらに新住所(C)へと順送りに転送されることになります。
また、事情により転送を止めて元の住所で受け取りたい場合でも、設定の「解除」という手続きは存在しません。
この場合、転送先(B)から元の住所(A)へ戻すための転居届を改めて提出する必要がありますが、処理が複雑になり郵便物が循環してしまうリスクもあります。
短期的な利用や拠点が流動的な場合は、申請前によく検討しましょう。
郵便到着までのリードタイムが伸びる
転送サービスを利用すると、郵便物が手元に届くまでの日数(リードタイム)が通常より長くなる点に注意が必要です。
郵便物は一度、記載された旧住所を管轄する「集配郵便局」へ運ばれてから転送処理が行われます。
たとえば、福岡から北海道(旧住所)宛てに送られたものを東京(新住所)へ転送する場合、「福岡→北海道→東京」というルートを辿ることになります。
一度旧住所を経由し、転送シールを貼る作業が発生するため、物理的な移動距離と時間が大幅に加算されてしまうのです。
緊急性の高いビジネス書類が遅れる原因となるため、転送設定に頼りすぎず、速やかに取引先へ住所変更を通知することが重要です。
日本郵便での郵便物以外は転送されない
転居・転送サービスで転送されるのは、あくまで日本郵便が取り扱う郵便物に限られます。
そのため、ヤマト運輸の「ネコポス」や「クロネコDM便」、佐川急便の「飛脚メール便」といった他社の配送サービスで送られる荷物は転送の対象外です。
これらは旧住所に届いても転送されず、宛先不明で返送されてしまう可能性があるため注意が必要です。
また、Amazonのように独自の配送網を持つサービスを利用している場合も、配送手段によっては転送されません。
とくに「置き配」設定のままになっていると、旧オフィスに荷物が放置され、紛失トラブルに発展するリスクもあります。
郵便局への届け出だけで安心せず、取引先や各サービスへの住所変更手続きを漏れなく行うことが重要です。
延長は自動ではなく再申請が必要
転送サービスを利用するうえでとくに注意が必要なのが、有効期限の管理です。
転送期間は「届出日から1年間」と定められており、期間が満了しても自動的に延長されることはありません。
期限を過ぎると転送は停止され、旧住所宛ての郵便物は差出人へ返還されてしまいます。
重要な請求書や契約書が届かなくなるリスクを防ぐため、期間の管理は厳密に行いましょう。
もし1年を超えて転送が必要な場合は、期限内に再度転居届を提出することで、さらに1年間の更新が可能です。
ただし、転送はあくまで一時的な措置です。
更新手続きに頼り続けるのではなく、期間内に取引先や関係各所への正式な住所変更を完了させるよう、計画的に業務を進めてください。在宅勤務のために郵便局の転居・転送サービスは使える?
在宅勤務の導入に伴い「会社宛ての郵便物を担当者の自宅へ転送したい」と考える企業も増えています。
しかし結論から言うと、この方法は推奨されません。本来、転居・転送サービスは生活拠点の移転を前提とした仕組みであり、一時的な勤務場所の変更は想定されていないためです。
郵便局の判断によっては申請自体が受理されないケースもあるため、検討する際は必ず窓口で確認を行ってください。
さらに最大のリスクは、先に述べたとおり一度設定すると転送を途中で解除できない点です。
もし在宅勤務が早期に終了しても、郵便物は登録期間中ずっと自宅へ届き続けてしまいます。
セキュリティや管理上のリスクが高いため、安易な利用は避け、慎重に判断してください。
転送はかけずに、自宅から郵便物を確認したい場合は「クラウド郵便サービス」を使ってみよう
郵便局の転送サービスでは、「転送不要」の重要書類が届かないリスクや、物理的に受け取る手間が残ります。
そこでおすすめなのが「クラウド郵便サービス」です。
これは、会社に届く郵便物を代行会社が回収し、すぐにスキャンしてデータ化してくれるサービスです。
PCやスマホからオンラインで内容を確認できるため、在宅勤務中でも郵便物を確認するためだけに出社する必要はありません。
また、郵便局の転送機能を使わないため、銀行や行政からの「転送不要」郵便物も問題なくデータ化して確認できます。
クラウド郵便サービス「atena」を活用すれば、物理的な管理負担を大幅に減らしつつ、重要な情報の見落としも防げるでしょう。

△ atena のサービス画面。届いた郵便物が一覧で見れる。
関連記事:会社に届く郵便物をオンラインで確認できる「クラウド郵便」とは?仕組みを解説
まとめ
郵便局の転居・転送サービスは無料で手軽に利用できる反面、「転送不要」の重要書類が受け取れない、期間制限があるといったビジネス上のリスクも存在します。
とくに重要な信書のやり取りが多い企業では、転送設定だけに頼るのは管理上の不安が残るでしょう。
単なる転送だけでなく、郵便物をデータ化しWeb上で確認できる「クラウド郵便サービス」などの導入も視野に入れてみてください。
そのうえで、自社の働き方に最も適した郵便管理体制を整えてみてはいかがでしょうか。




