「人手不足を解消して生産性を向上させたい」「市場の変化に対応し、競争力を維持したい」といった悩みを抱えている方は多いでしょう。
こうした課題の解決には、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務の効率化が有効です。
なぜ今DXが必要とされているのか、そしてDXによってどのような業務が効率化できるのかについて、経理・営業・製造現場の具体的な事例を交えて解説します。
また、DXを成功させるためのステップや重要なポイントもご紹介しますので、自社の状況と比較しながら、DX推進のヒントとしてぜひご活用ください。
DX化と業務効率化の関係
「DX」と「業務効率化」はよく混同されます。
しかし、「DX」と「業務効率化」の違いを理解することが、DXを進めるための最初のステップです。
DXとは、単にITツールを導入したり、アナログ作業をデジタルに置き換えたりすることだけを指すのではありません。
むしろ、デジタル技術を活用して、業務の流れや会社の文化そのものを根本から変えていくことを意味します。
DXには、業務効率化につながる以下のメリットがあります。
- 定型的な作業を自動化することで生まれる「時間のゆとり」
- データを見える化し分析することで、より素早く正確な判断ができる「迅速で正確な意思決定」
- 部門ごとにバラバラだったシステムを連携させることで実現する「スムーズな情報共有」
これまでの業務効率化は、今ある作業手順をよりよくする「改善」に力を入れてきました。
一方で、DXによる業務効率化は「そもそもこの業務は人がやるべきなのか?」という視点から考え始めます。
業務の内容自体を見直し、「担当者は生産性の高いコア業務に集中し、繰り返し作業はシステムに任せる」こうした考え方と、それを実現する仕組みを作ることが、DXが目指す本当の業務効率化です。
DXによる業務効率化が注目されている理由
なぜ今、多くの企業がDXによる業務効率化に注目しているのでしょうか。
その大きな理由として、人手不足や働き方改革への対応など、企業が避けて通れない社会の変化があります。
また、経済産業省が指摘している「2025年の崖」という問題や、将来の見通しが不透明な市場環境も大きな要因です。
ここでは、こうした企業を取り巻く課題を整理した上で、DXによる業務効率化が注目されている理由について解説します。
人手不足や働き方改革への対応
少子高齢化による人手不足や、国が推進する働き方改革への対応は、多くの企業にとって大きな経営課題となっています。
この課題を解決する方法として、DXによる業務の効率化が注目されています。
これまで人が手作業で行っていた定型的な業務や繰り返しの作業も、AIなどのデジタル技術を使って自動化・効率化することで、限られた人員でも高い生産性の維持が可能です。
さらに、コロナ禍をきっかけにテレワークが普及しましたが、ある調査ではバックオフィス部門の約4人に1人が、紙の書類対応などを理由に出社しているという結果があります。
こうした業務をDXによってデジタル化すれば、場所にとらわれない柔軟な働き方が実現可能です。
その結果、従業員の満足度向上や、多様な人材の確保にもつながります。
「2025年の崖」に対応するため
「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年の「DXレポート」で指摘した問題です。
多くの企業が長年使い続けてきた基幹システムは、老朽化や複雑化が進み、「レガシーシステム」と呼ばれる状態になっています。
このままの状態を放置すると、システムの保守にかかるコストが増えるだけでなく、社内のデータを十分に活用できなくなり、市場競争力の低下を招きます。
また、システムが複雑化・ブラックボックス化することで、セキュリティリスクも高まるでしょう。
もしこの課題を克服できなければ、2025年以降、日本全体で年間最大12兆円もの経済損失が生じると試算されています。
こうした状況を乗り越え、変化の速い市場で企業が生き残るために、DXを積極的に推進することが求められているのです。
市場環境の変化に対応するため
現在のビジネス環境は、顧客ニーズの多様化や予測できない社会情勢の変化が続き、先行きが不透明です。
このような状況で企業が成長を続けるためには、従来のやり方に固執するだけでは、市場から取り残されてしまいます。
企業に求められるのは、市場のニーズや顧客の課題を素早く把握し、それに合わせて製品やサービス、場合によってはビジネスモデル自体を柔軟に変える力です。
DXを推進し、データを活用して迅速に意思決定したり、業務プロセスを効率化したりすることは、こうした変化への対応にとって有効な方法です。
デジタル技術を前提とした、変化に柔軟に対応できる組織体制を整えることが、市場での競争力を維持し強化する上で重要となります。
DXで実現できる業務効率化の具体例
「DXと聞いても、どの業務から始めればよいのかわからない」と感じる方も多いのではないでしょうか。
DXによる業務効率化は、特定の部門だけでなく、さまざまな部門で実現できます。
ここでは、経理や人事などのバックオフィス業務から、営業、そして製造や物流といった現場の業務まで、部門ごとにDXで実現できる業務効率化の具体例を紹介します。
クラウドサービスやCRM/SFA、IoTやAIなどのツールが、日々の業務にどのような変化をもたらしコスト削減や生産性向上につながるのか、実際の例を具体的に見ていきましょう。
バックオフィス業務(経理・人事・総務)でのクラウドサービス導入
経理や人事、総務といったバックオフィス業務は、企業経営に欠かせない存在です。
しかし、請求書処理や経費精算、勤怠管理など、手作業で繰り返す業務が多いことが実情です。
ここにクラウドサービスを導入すれば、業務を大幅に効率化できます。
たとえば、会計ソフトをクラウド型に切り替えると、請求書の発行から入金の管理までを自動化でき、手入力によるミスや作業の手間が減ります。
また、勤怠管理システムを活用すれば、従業員はどこからでも出退勤の打刻が可能になり、管理者はリアルタイムで労働時間を把握できます。
そのため、人事や労務担当者による手作業での集計も不要になります。
さらに、これらのクラウドサービスはインターネット環境があればどこでも利用できるため、テレワークの推進にも役立ちます。
繰り返し作業の効率化によって、従業員が本来の業務に集中できる環境を作る第一歩として、バックオフィス業務でのDXは効果的でしょう。
営業活動におけるCRM・SFA導入
営業活動は企業の売上に直結しますが、どうしても個人のスキルや経験に頼りやすく、業務が担当者ごとに属人化してしまう課題があります。
このような問題を解決し、組織全体の営業力を高めるために、CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)の導入が有効です。
これらのツールを導入すれば、それまで各営業担当が個別に管理していた顧客情報や商談履歴、案件の進捗状況などを一元管理し、チーム全体で情報を共有できます。
そのため、担当者が不在の場合でも他のメンバーによる顧客対応の引き継ぎが可能です。
また、蓄積したデータを分析することで、成約率の高いアプローチ方法を見つけ、データに基づいた営業戦略を立てることもできるようになります。
さらに、オンライン商談ツールと連携させれば、移動時間や交通費の削減も可能です。
このように、営業活動にDXを取り入れることで、組織力と効率の両方を高められます。
製造・物流におけるIoT・AIの活用
製造業や物流業では、人手不足の解消や生産性の向上が大きなテーマです。
その有効な解決策として注目されているのが、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といった技術です。
たとえば、製造ラインでは機械にIoTセンサーを取り付けて稼働状況を常に監視し、AIがそのデータを分析します。
AIのデータ分析により、設備の故障時期を予測できれば、適切なタイミングでメンテナンスを実施できます。
これにより、突発的な生産停止を防止できるでしょう。
さらに、AIの画像認識技術を使うと、熟練者でも見逃しがちな細かな不良品を自動で検出できるため、品質の向上と検品作業の省人化にもつながります。
DXで業務効率化を進める流れ
DXによって業務効率化を成功させるためには、ただツールを導入するのではなく、計画的に取り組むことが大切です。
「何から始めればよいかわからない」と感じている方のために、ここではDX推進の5つのステップについて解説します。
DXで業務効率化を進める5つのステップに沿って進めれば、着実に成果を生み出すDXを実現できるでしょう。
STEP1:業務の課題把握
DXによる業務効率化の最初のステップは、自社の現状を正しく理解することです。
まず「どの業務に、誰が、どの程度の時間を使っているのか」を数値などで見えるようにし、作業のボトルネックや非効率な部分を明らかにしましょう。
このとき重要なのは、経営層や管理職だけでなく、実際に現場で作業している従業員の意見や声にも耳を傾けることです。
トップダウンの視点だけでは気づけない、日々のちょっとした手間や現場特有の課題、改善アイデアが見つかるかもしれません。
STEP2:効率化の目標設定
業務の課題が洗い出せたら、次は具体的な目標を決めます。
ここでのポイントは「誰が見ても進捗や達成度がわかる、数値で測れる目標」を立てることです。
たとえば「ペーパーレス化を進める」といった曖昧な目標ではなく、「請求書の作成や承認にかかる時間を月で40%減らす」「問い合わせ対応の平均時間を30%短縮する」など、数値を使って目標を決めると効果がわかりやすくなります。
STEP3:適切なDXツールの選定
課題と目標が明確になったら、それを実現するためのDXツールを選びます。
このとき忘れてはいけないのが「選んだツールで本当に目標が達成できるか」「課題を解決できるか」という視点です。
情報収集はインターネットだけでなく、IT系の展示会やセミナーに参加して最新情報を得たり、サービス提供企業から直接話を聞いたり、他社の導入例も参考にしましょう。
口コミや評判がよくても、自社の業務や職場環境に合うとは限りません。
導入後のミスマッチを防ぐためにも、無料トライアルやデモ版などを活用し、現場の社員が実際に使ってみて使い勝手を確かめておくことが大切です。
STEP4:試験運用と全社展開
DXツールの導入が決まったら、いきなり全社展開せず、まずは一部の部署やチームで試しに導入(スモールスタート)することをおすすめします。
この段階で、業務フローにツールが合っているか、期待通りに効率化できるか、思わぬトラブルが起きないかなどをチェックしましょう。
たとえば、データ入力やレポート作成など、繰り返しの多い作業の自動化から試してみるのも効果的です。
現場から寄せられるフィードバックは、本格導入後の運用ルールやマニュアルづくりに大いに役立ちます。
このようにしてツールの有効性を確認でき、問題点も解消できた上で全社展開に移ることで、現場の混乱を防止できます。
段階的な導入により、DXの失敗リスクも低く抑えられるでしょう。
STEP5:効果測定と改善の継続
DXはツールを導入して終わりではなく、むしろ導入してからが本当のスタートです。
STEP2で決めた目標(「業務時間〇%短縮」や「コスト〇円削減」など)が実際に達成できているか、必ず効果を測定しましょう。
効果を調べるときは投資対効果(ROI)などの数字だけでなく、現場の社員がツールを使いこなしているか、新しい問題が起きていないか、といった声もしっかり集めることが重要です。
こうしたデータや現場の意見をもとに、改善点を見つけてPDCAサイクルを回せば、DXの効果をさらに高められます。
また、想定外のよい効果が現れた場合は、その取り組みを他の部署にも広げる手がかりになります。
このように、継続的な改善を繰り返すことが、DXを成功させるためのポイントになります。
DXでの業務効率化を成功させるためのポイント
多くの企業がDXに取り組んでいるものの、実際には思うような成果が出ないケースも少なくありません。
DXによる業務効率化を成功させるために、押さえておきたいポイントがあります。
ここでは、DXでの業務効率化を成功させるためのポイントを解説します。
経営層のコミットメント
DXを通じて業務効率化を本当に実現できるかどうかは、経営層の姿勢に大きく左右されます。
現場やIT部門に任せきりにしていると、部門ごとの部分的な改善はできたとしても、全社的な変革にはつながりません。
実際、「ツールを導入したが、期待した効果が出ない」という失敗の多くは、経営層の関与が不十分であることが原因です。
経済産業省の調査でも、DXが進まない企業の課題として「経営者がITやデジタルの重要性を理解していない」「経営者自らの言葉でビジョンを伝えていない」ことが挙げられています。
そのため、経営層自らがDXの目的や戦略をはっきり示し、全社へその意義を繰り返し発信することが重要です。
トップが先頭に立って改革を推進することで、初めて従業員を巻き込んだ本格的な取り組みが実現するのです。
従業員のITリテラシー向上
どれほど優れたDXツールを導入しても、従業員が十分に使いこなせない場合、期待していた業務効率化は実現しません。
むしろ、一部の担当者だけが新しいシステムを扱える状況になると、業務が属人化してしまい、かえって非効率になるリスクさえあります。
そこで、DXを成功させるためには、まず現在の業務プロセスを見える化し、標準化を進めることが必要です。
このようにして、誰もが同じ手順で効率よく作業できるようになってはじめて、デジタルツールの効果が十分に発揮されます。
さらに、その標準的なプロセスを新しいツールの上で定着させていくには、従業員全員がツールを正しく使う力、つまりITリテラシーが欠かせません。
ITリテラシーを高めるためには、経営層が主導して研修や勉強会を実施したり、組織全体にIT活用への前向きな文化を根付かせたりすることが大切です。
こうした取り組みが、DXの成功につながっていくのです。
外部パートナーや支援制度の活用
DXを進める上では、IT技術だけでなく業務プロセス改革やマーケティングなど、幅広い専門知識が求められます。
しかし、多くの中小企業にとって、こうした知識や人材を自社だけで全て揃えるのは難しいのが現実です。
このような課題を乗り越え、DXをより効果的に進めるには、外部の専門家や国・自治体の支援制度を活用することが有効です。
DX支援の専門パートナーに相談すれば、第三者の視点で自社の課題を分析してもらえます。
その上で、自社に合った解決策や適切なツールを提案してもらえるため、社内にノウハウがなくてもスムーズにDXを推進でき、不要な投資のリスクも抑えやすくなります。
また、「IT導入補助金」などの制度を活用すれば、コストを抑えながらDXに取り組めるでしょう。
自社の人材だけにこだわらず、外部の力や公的な支援をうまく活用することが、DXによる業務効率化を実現する重要なポイントとなります。
DXで業務効率化を実現するならatena
「何から始めるべきかわからない」「専門人材がいない」といった理由で、DXの第一歩を踏み出せずにいる方も多いのではないでしょうか。
DXを成功させるポイントは、まずは効果を実感しやすい小さな業務から始めることです。
バックオフィスの効率化を検討している方には、クラウド郵便サービス「atena」がおすすめです。
「atena」は、会社に届く郵便物を代理で受け取り、スキャンしてデータ化できます。
従業員は場所を問わずに郵便内容を確認できるため、出社する必要がなくなります。
その結果、生まれた時間を本来の業務に充てられるようになります。
月額1万円からで手軽に始められるため、費用対効果を見ながら、リスクを抑えてDXを始められます。
バックオフィスDXによる効率化の手段として、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
本記事では、DXによる業務効率化が注目される理由、実際の事例、そして成功させるための進め方とポイントを解説しました。
DXは単なるデジタル化ではなく、人手不足や市場の変化といった経営課題に対応し、企業の競争力を高める取り組みです。
まずは自社の業務プロセスを見直し、どこに課題があるのかを洗い出すことから始めましょう。



